2025年8月25日〜27日にフランス・アビニョンで開催された The 26th Annual Meeting of the Special Interest Group on Discourse and Dialogue (SIGDIAL 2025) にて当研究室から中江が口頭発表を行いました. (執筆者:中江)
今回はフランス・アビニョン大学で開催されました.発表件数は58件,採択率は例年より高く50.8%でした.種類別の採択率は,Long paperが54.7% (投稿数75件,採択数41件),Short paperが42.1% (投稿数38件,採択数16件),Demo paperが33.3% (投稿数3件,採択数1件) となりました.
SIGDAIL 2025の採択された論文の著者は約500人程で,日本が34.6%と最多で,次いでアメリカ(18.3%),ドイツ(13.0%),フランス(10.9%)などが続きました.著者は日本人が最多ですが,これはライブコンペ論文が2本とも日本の研究グループによるものであり,日本人研究者の数が全体に占める割合が大きくなりました.
中江は,リアルタイムゲーム環境におけるユーザの習熟度を考慮した対話分析について口頭発表を行いました
本研究では,協力型料理ゲーム環境を拡張した実験環境を用いて人間同士のリアルタイム協力対話を収集・分析し,プレイヤー間の習熟度差がコミュニケーションや役割分担にどのような影響を与えるかを明らかにしました.発表ではデータ収集のプロセスと,本研究にて広範に実施した分析結果について報告・議論を行いました.
私にとっては初めての国際会議の参加かつ,英語での口頭発表であり,大変貴重な経験となりました.初めての英語での発表は緊張や準備不足の点もありましたが,伝えたいことをしっかり届けようと努める中で,自分自身の成長を強く実感できました.今回の経験を糧に,今後も国際的な場で研究を発信していきたいと考えています.
Kaito Nakae, Michimasa Inaba: Task Proficiency-Aware Dialogue Analysis in a Real-Time Cooking Game Environment, Proceedings of the 26th Annual Meeting of the Special Interest Group on Discourse and Dialogue (SIGDIAL 2025), pp. 764–779, 2025.
Isidora Jeknic, Alex Duchnowski, Alexander Koller. Collaborative Problem-Solving in an Optimization Game, In Proceedings of the 26th Annual Meeting of the Special Interest Group on Discourse and Dialogue (SIGDIAL 2025), pp. 780–799, 2025.
人間とAIが対話を通じてNP困難な最適化問題を協力して解く枠組みを提案。「TRAVELING ADVENTURERS」という二人協力型ゲームを設計し、各プレイヤーが部分的な情報のみを持つ状況で巡回セールスマン問題を共同解決する課題を設定。純粋なLLMエージェントは知識追跡や会話の基盤づくりに弱い一方、LLMと記号的手法を統合したニューロシンボリックエージェントは自己対戦で98%正解・45%最適解を達成し、人間との協力でも32%で最適解に到達しました。これにより、最適化問題における対話的協力の可能性と課題を明らかにしています.
Noé Durandard, Saurabh Dhawan, Thierry Poibeau. Language Style Matching in Large Language Models. In Proceedings of the 26th Annual Meeting of the Special Interest Group on Discourse and Dialogue (SIGDIAL 2025), pp. 620–636, 2025.
この論文は、大規模言語モデル(LLM)が会話相手の言語スタイルをどの程度揃えられるかを調査した研究です。人間同士の会話ではLSM (Language Style Matching) が83%以上と高いのに対し、LLMとの実際の対話では63〜71%程度と低く、文学的文章補完タスクでも77〜82%にとどまりました。モデルサイズが大きくなっても改善は見られず、品詞ごとに差がありました。改善策としてプロンプト工夫や Logit-Constrained Generation (LCG) を導入したところ、特にLCGで平均13%の大幅な向上を実現。LLMの社会的適応力の限界を指摘しつつ、推論時の工夫で自然な対話を実現できる可能性を示しています.
学会全体を通じて,対話システムや談話解析に関する最先端の研究に触れることができ,多くの刺激を受けました。特にポスターセッションでは海外の研究者と活発に交流する機会があり,非常に貴重でしたが,同時に自分の英語スキルの不足を痛感する場面も少なくありませんでした。
しかし,不十分さを実感したからこそ,「次はもっと伝えられるようになりたい」という強い動機が生まれました。英語が拙くても相手が真剣に耳を傾けてくれた経験は,大きな自信につながりました。この経験を通じて,研究内容だけでなく英語での発信力を磨くことの重要性を改めて実感しました。今後は日常的に英語を使い,次回はより自信を持って研究を伝えられるよう努力していきたいと思います。